かくも爽快な世界が他の何処にあろうか
私は重くなった四肢を捨て、風のように空の管を抜けてゆく
そして道の果てに見える光を目指している間は、何もかもを忘却出来るのだ
床に伏してただ願うばかりだった死よ
これが如何に儚き夢でも私は貴方を拒みはしない
床に伏した私を蝕んだ病よ
おまえはその肉塊を貪り食うがいい
私はただこの臨死の中で
道の向こうにある光へと還ろう

名もない彫像よ
あなたは偶像です
いつか私が愛したその人にあまりにも似ているから
名もない彫像よ
あなたは罪です
その鈍色の瞼がいくら苔蒸しても、瞬きすらしないのだから
名もない彫像よ
私も罪です
本当なら触れてはならない貴方に触れてその汚れを拭い去ろうとしているのだから

閉ざされた箱の中で、男の子はこう言いました
はやく誰か助けに来て
閉ざされた箱の中で、女の子はこう言いました
はやくここから抜け出したい
閉ざされた箱の中で、誰かがこう言いました。
手の届かない世界の事ばかり考えるから辛いのさ
そして箱は静かになりました