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イラスト・小説ホームページ「十字工房」の管理人。 ブログをほったらかしになる事が多々ありますが、ちゃんと生きてますw 趣味はニコニコ動画閲覧です。
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11 October 2010            追憶の海原(仮)  |  オリジナル小説  |  TB:0  |  C:0  |
プロローグ

 暗雲の立ち込める空の下。
 静かな海原に一隻の船が浮いている。周囲に陸地は見えず帆は畳まれていて、人の気配はない。
 幽霊船のようなその船は、やがて人々の記憶から忘れ去られ、誰にも知られぬまま沈むだろう。
 だが、船は知っている。
 ここで起こった乗客を襲った悲劇と、ある一つの物語の幕開けを。

1.そよ風が吹くとき

「脱走だー!囚人たちが逃げていくぞー!!」
 とある収容所にて、看守の大きな声が響く。
 中庭では、蜘蛛の子を散らしたように囚人たちが一目散に走り去っていく。
「くそ、鍵はちゃんとしめたのに何故だ?!」
 牢屋に戻って、看守は逃げた囚人の居た部屋の鉄格子を、がしゃがしゃと揺らした。
 随分と苛立っていたが、突然彼の動きはぴたりと止まる。
「鍵はきちんとかかっている。・・・逃げた後に再び閉めたのか?
いや、そんな事をしても意味がない。し、しかし壁を破壊した様子もなければ地面に穴も掘られていない。あいつら、一体どうやって逃げたんだ?」
 彼の困惑する様を見て、隣の牢屋に居た囚人が不気味に笑い始めた。
「看守さん、その鍵は元から閉まっていたよ。
それにあんたの言うように、中に居た奴は壁を壊したり土を掘ってもいない」
「貴様!脱走した所を見ていたのか?!」
 看守が鉄格子を蹴って威嚇する。だが、囚人はぴくりとも反応しなかった。
「言え、奴らの逃走経路を!逃げた奴らは一体何をやったんだ?!」
怯えた様子もなく不気味な男は笑みを絶やさないまま
「何もしていない。彼らは無実だ。だから逃げ出せたのさ」
「挑戦的な態度だなお前・・・良い度胸してやがるぜ!」
 看守は鉄格子の隙間から囚人に向かって警棒を投げつけた。
「貴様みたいな奴は徹底的に再教育してやるわ!出ろ!」
 ポケットから鍵を取り出し、看守は扉を開けようとする。
 すると、囚人は警棒をぶつけた頭をさすりながら立ち上がった。
「言われなくてもそうするよ。ところであんた・・・」
「そんな所で何をしているのかな?」
 同じ声が、違う場所からした。
「何・・・?・・・はっ!」
 不気味な男がそう問いかけて数秒後、看守は周囲の視界の変化に気付いた。
 それは、いつの間にか自分が囚人服を着て檻の中にいて、先ほどの囚人が看守の格好になって外に居るという奇妙な現象。
二人の位置が、入れ替わっている。
 いつ入れ替わったのか、どうしてこうなったのか。恐らく、今格子を挟んで外側にいる彼だけが唯一回答できるのだろう。
「な、何?何だ?!貴様、今一体何をしたのだ?!」
「言ってることがよくわからないな。あんた、最初からそこに居ただろう?」
「そ、そんな筈は・・・」
「ははーん、さては投獄される前にやっていたクスリがまだ切れてないな?今、あんたは幻覚を見ておかしな妄想を抱き、混乱してるってわけだ」
「ふざけるな!お、俺は正常だっ!おかしいのは貴様だ!気付かんうちに貴様と俺の位置が入れ替わりやがって・・・!見ろ、すっかり俺は囚人ではないか!」
「ああ悪い、本当に言ってることがよく分からないや。・・・どうやら末期症状らしいね、お前さん。せめてもの情けだ、よく効く薬をやるよ」
 男はおもむろに懐に手をやると、小さな瓶に詰まった白い粉末を取り出した。
「飲むのも撒き散らすのも投げるのも自由だ。けど、いずれにせよこいつを他の看守が見たらどう思うかな?」
「ひいっ!まさか・・・」
「せいぜい、上手く言い訳するんだな」
「ま、待て!貴様よくも・・・あれ?」
 間の抜けた声が看守の口から漏れる。彼が見ていたのは、牢屋の洗面台の鏡に映る自分の姿。
 だがその顔は、自分の顔ではない。見覚えのある人物がそこに居る。
「こ、これは、逃げた囚人・チャーリーの顔・・・?!」
 自分と同じ動きをすることから、彼が自分自身である事はすぐに把握できた。だが、何故こうなっているのかについては分からない。そうして混乱しているうちに、看守の格好をして自分になりかわった何者かは背を向け、囚人室を後にする。
「おい貴様待て!なんでチャーリーが鏡にうつってやがる?!なんでこいつは俺と同じ動きをする!!一体俺はこんな所で何をしているんだ?!」
 囚人にされた彼の絶叫は虚しく、誰の耳にも届くことはなかった。

***

 囚人たちの脱獄から一時間が経過した。事務室が騒ぎになっており、収容所全体が厳戒態勢となっている。そして、収容所近郊の道路脇の茂みに、二人の人間がしゃがみ込んでいた。
 片方は大柄の青年だった。背丈は180センチほどあり、まだ若く外見年齢は二十歳前後といったところである。彼は脱走した囚人の一人だが精悍な顔つきをしており、今着ている囚人服よりももっと良く似合う服がいくらでもあるだろう。
 もう片方は小柄で、二次成長を迎えたばかりのような、若いというよりは幼い少年だった。髪は肩にかかるかかからないかの長さで、その上から白いニット帽、口元に茶色いマスクを被っており顔全体は見えない。
「・・・今頃、刑務所は騒ぎになってる筈だ。お前さんも、速く逃げたほうがいいよ。せっかく逃げられたのにまた捕まっちゃ意味がないからね」
 少年が囚人服の青年に忠告する。だが青年は、その場を動こうとはしなかった。
「なんだ、逃げねえのか?」
「・・・一つ訪ねたいんだけどお前は何者だ?俺と同じ脱獄囚って訳じゃ無さそうだが」
「ここには用事があってちょっと寄っただけなんだ。あんた達を逃がしたのも単なる気まぐれさ、恩に着る事もないし知る必要もない事だ」
「・・・本当にただの気まぐれか?」
「ずいぶんと失礼な事を言う奴だな、疑ってかかるとは。純粋なボランティア精神を踏みにじるっていうのか?お前さん」
「お前のような年頃の子供が、ボランティアで囚人を逃がしたりするもんか。助けてもらっておいてなんだが、警戒している」
「警戒、なるほど警戒ねえ」
「そう、警戒心が強いのなら尚の事、俺について知ろうとするな。知った瞬間からお前さんの運命は大きく変わる」
「それは忠告か?」
 難しそうな顔をして、少年は唸りだした。
「助かったならもうそれで良いじゃねえか。とにかく俺ともうこれ以上係わり合いになるな」
 青年の額を人差し指で軽く押した後、少年は彼に背を向けて道路に出て歩いていった。

 彼には、多くの謎がある。見た目はまだ幼いのに醜悪な老婆のような狡猾さもある。
 背格好は露出が多く、肌の所々に水や炎を模した様々なタトゥーが掘られていて、マスクを取ればうすく桃色の口紅が見え、外見年齢に不釣合いな艶めかしさもある。道化と呼ぶのが相応しいだろう。
 彼は決して一つの場所に留まる事はなく、世界の至る所に神出鬼没に現れては悪戯をして去ってゆく。
 先ほどの青年たちを助けたのも、その悪戯のひとつなのか、それとも何か目的があっての事なのか。
 少年の名はシャルマンといった。誰にも知られないまま世の中から忽然と姿を消し、多くの謎だけを後世に残した人物である。
 これは、その謎を追う青年と、シャルマンの戦いの物語である。
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