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イラスト・小説ホームページ「十字工房」の管理人。 ブログをほったらかしになる事が多々ありますが、ちゃんと生きてますw 趣味はニコニコ動画閲覧です。
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2.そよ風がふく時2

 文明の最先端。
 ムー大陸の中心部には大都市、アルストロメリアがある。総人口は約5000万。面積は南北1万2000km、東西2万2000kmほどあり、規模は凡そニューヨーク2つぶんで、文明は現代社会よりも少しだけ先を行く近未来都市である。
 街中のいたる建物は黒く、しかし絶え間なく煌びやかな街頭が灯っているため、それが太陽の変わりになっている。
 時はおよそ一万二千年前。伝説として広く語り継がれる超古代文明の真っ只中である。

 常にお祭り騒ぎの中にいるようなその街は、当然ながら貧富の差も激しい。また、風俗店の呼び込みの姿もちらほらと見られ未成年の娼婦が我が物顔で街を闊歩している事も多々あった。
「美しい街だ」
 高層ビルの窓辺から、街を見下ろす男の姿があった。ダークスーツをネクタイもせず着くずし髭を生やし、鋭くつり上がった目をした男だった。
「しかし所詮は人の街といった所だな、美しいがゴミが多い。これは目に悪いな。やはり君を誘って正解だったよ」
 男は振り返って、ベッドに腰掛ける少女に近づいていく。膝をベッドに乗せて少女の頬を撫でた後、そのまま押し倒して服を脱がせはじめた。
「そろそろ名前くらい教えてくれても良いんじゃないか?それとも私がつけてあげようか」
「下らない前置きはいいよ、するなら早くしたら?」
 強気な彼女の態度が愉快なのか男は可笑しそうに笑う。どうせその済ました表情も凛とした声も数分後には狂い悶えるに違いない。
「お言葉に甘えて、そうさせて貰うよ」
 少女の上着のボタンを少しずつ外し、ドレスの紐を解きはじめる。
「ん?この模様、どこかでみたことがあるぞ。君は・・・い、いやお前は!」
「なぁんだ知ってたなら話が早い」
 ここで少女の声色が急に乱雑なものに変わる。男は戸惑う間もなく回り込まれ、少女に首を強く締め付けられた。
「この肩の刺青の男を殺せと誰かに命令されなかったか?背格好はあんたと同じくらいだ」
「あ、ギギ・・・貴様は・・・?!」
「・・・言えよ、俺はそいつを探してる」
「そうか、貴様があのシャルマンだったのか・・・!」
 男はズボンのポケットに左手を入れた。何かを取り出そうとしているのか。シャルマンは空いているほうの手で男の右腕を持ち上げる。
「何しようとしてる?拳銃は内ポケットに入れるもんだぜ」
「残念だったな、こうなる事も想定して、あの方はもう一つの命令を残して下さった・・・」
 男が言い終わった次の瞬間、その手首がぱたりと落ちる。
「・・・!おい、どうした?しっかりしろ!」

 シャルマンは男の様子を調べる。脈がなく既に心臓も止まっているようだった。
 そして男の右手には、何もなかった。ただ、手のひらに僅かな量の水滴が残されている。
「こいつは・・・」
 この水が男の死因に何らかの関係があるのだろう。しかし、それがどう作用したのかは全くの謎である。
「これだけの証拠じゃ何も解らないな。尻尾を掴んだと思ったら尻尾しか残ってなかった。そんな感じだな、なあお前さんもそう思うだろう?」
 部屋の外に向けてシャルマンは声をかける。ドア一枚隔てて、また別の何者かが接近している事を察知していたらしい。
「こんな所まで俺みたいなやつを追いかけてきて、ご苦労なこった」
 ドアの外に居たのは、留置所で逃がした例の青年だった。まだ姿を見られた訳でもないのに完全に看破されている。彼は、部屋の中へと足を踏み入れた。
 ベッドの側の床で、先ほどの男が死んでいる。そしてその上で、半裸体のシャルマンが衣服を着直さず好戦的な笑みを浮かべて青年を眺めていた。
「もうあんた、後戻り出来ないぜ?この場を見られたからには、それ相応の対応をとらせてもらう」
「そいつ、死んだのか・・・?」
「ああ、もう息もしてない。心臓も止まってるぜ。俺がやったと言っても誰も疑わないだろうな?」
 まるで、そう言って見ろとでも言わんばかりに目元と口元をつり上げてシャルマンは青年を睨みつける。
「警察でも呼んでそう言うか?それとも、こいつの変わりにあんたが俺を買うかい?」
 なぶるようなシャルマンの態度に対し、青年の目は真剣だった。何を訴えようというのか。彼には畏れも動揺も無かった。
 何を思っているのか、考えがお互いに読めない。ほんの数秒ほど間を開けた後、青年はゆっくりと口を開けた。
「俺は自分の運命を変えたいと思っている」

***

 ホテルから場を移した二人は飲食街のファミリーレストランに入り、窓際のテーブル席に腰をかけた。シャルマンの顔からは笑みが消え、青年も仏頂面のまま、ただメニューを黙って眺めていた。
「何も食べないのか?」
「さっきのホテルでルームサービスを頼んで食った。だから腹は減ってない」
「そうか、それは悪いな。さて、俺はハンバーグセットとキーマカレーとフライドチキンでも頼むとするか。ドリンクバーがあるようだが、お前も頼むか?」
「遠慮しとくよ。それよりも、よくあんなの見た後でそんなに食べられるね。ええと・・・」
「ソレントだ。フルネームでソレント=グリーバー。半年前までディアスシア村の傭兵学校に居た。今は訳あって何もしていないが・・・まあ腹が減るものは減るんだよ」
 ベルを鳴らし、ソレントはウェイトレスに料理を頼む。シャルマンは拒んだが、ドリンクバーとアイスクリームを追加で2つ注文した。
 むしゃむしゃと届いた料理を頬張るソレント。シャルマンは何処かぶつが悪そうに窓から外を眺めていた。
「何を怒ってるんだ?」
「・・・子供扱いしてないか、俺、お前よりは長く生きてるんだぜ?」
「そりゃ意外。いくつだ?俺は今年で二十歳になるが」
「言いたくない」
言葉とは裏腹に、シャルマンの振る舞いは反抗期の拗ねた子供そのものだった。
「年上だったか。あ、じゃあタメ口もやめたほうがいいっすか?」
「どっちでも構わない。それよりもさっきの話、本当なんだろうな?」
しばらくおどけた態度をとっていたソレントだったが、シャルマンがそう聞くとぴたりと食器を置いて神妙な顔つきになる。
「・・・ああ、本当だ」
 ソレントは答えながら、ナフキンで口元を拭う。
「本気で言ってんのか、あいつはお前さんみたいなヒヨッコの手に負えるレベルの相手じゃないんだよ」
「そんなのやってみないと分からない」
「やってからじゃ遅いから言ってるんだ。一度目をつけられたら町中のギャングがお前さんの敵だ」
「さっきの物好きなチンピラみたいにか」
 ソレントが言うと、シャルマンはさらにむっとした表情になった。
「俺が何してようと勝手だろ、お前に何か迷惑かけたか?」
「別に」
「そもそもソレント、お前が奴を狙う理由はなんだ」
「ボランティアだよ」
「嘘だろ?」
「じゃあ助けてくれたお礼ってやつかな」
「じゃあって何だ、真面目に答えろよ!」
 ボランティアという言葉がつい先日自分がソレントに対して吐いた言葉で、それがそのまま自分に返ってきているのが当てつけのように感じ、シャルマンは酷く不愉快に感じた。
「・・・許せるのか?」
「は、何を?」
「奴、つまりロビンの事だ。広域暴力団の力をつかって、狩りを楽しむかのように毎年、何人もの人を殺害している。どれだけ偉いのか知らないが、奴のせいでこの街の治安はいっこうに良くならない。倒すべき悪と考えてはいけないのか?」
「きれい事ばっかり並べてんじゃねえ、お前は車の怖さを知らなくて車道を横切るガキか?」
「どう思われても構わない。俺は一人でもロビンを倒す。だが、どうせやるなら二人のほうが仕事が速い。そうだろう、シャルマン?」
「・・・勝手にしろ、仮にお前さんが死にかけてても助けてやらないからな」
 もう何を言ってもソレントは聞かないだろう。これ以上話し合うのは無駄だと感じたので、渋々とシャルマンは、彼の申し出を受け入れた。
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