澄んだ空気は星々の輝きを明瞭に伝わせ
黒い空は白色のそれらをより一層際立たせる
静かな夜
あらゆるものは眠りについており
林道を行く旅人は足音の響くのを嫌った
枯れ枝を一つでも踏もうものなら
森は目を覚ましてしまうから
それでも尚、彼は足を進める
誰かに追われている訳でもなく
誰かを追う訳でもない
だが目的とする処はあった
その森でしかお目にかかれないと云う
"弥生の拝める場所"
ほんのひとときだけ
"それ"は姿を見せる
波一つ立てぬ湖面が水鏡となり、空を映す
旅人はそこでようやく歩くのを止め、腰を下ろした
そして静寂の中、彼は確かに視た
空の端と湖面にうつされた"それ"は、確かに3の形をしていたのである
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